山門の言葉

令和8年1月山門の言葉

七宝の獄にぞいましむる
『正像末和讃』

「探し物は何ですか?見つけにくいものですか?」

井上陽水の代表曲である「夢の中へ」の冒頭に出てくる有名なフレーズである。

先日鍵を失くした(と思い込んでいた)。失くしたと気付くまでは全く気にも留めていなかったが、失くしたと分かった途端、焦燥感や絶望感、自分に対しての失望感に苛まれた。幸い自分の勘違いで、見つかったからよかったものの、本当に肝を冷やした。

自分が失くしたことに気付いていれば、何を探せばいいのか見当がついているので、まだマシである。失くしていることに無自覚であることが、大問題なのである。

親鸞聖人はそういう我々の在り方を、「七宝の獄」という言葉で言い表している。金銀瑠璃等の宝が散りばめられた、要は私にとって居心地のいい世界である。

鍵を失くしたのは自分の責任なのに、誰かのせいにしてみたり、私のように鞄のせいにしてみたり。気が付けば、いつも自分が是でその他は非としている。私個人を大切にし、他との関わりを蔑ろにする在り方。非常に閉塞的であり、その生き方を牢獄の中を生きていると明らかにされている。しかしいかんせん居心地がいい世界なので、まさか自分が牢獄にいるとは夢にも思わない。

まさしく「夢の中へ」埋没している私たち。その夢の中にいる私を叩き起こそうとするのが仏の智慧である。

年頭にあたり、目を覚ませと阿弥陀が叫んでいる。その叫び声に耳を傾ける一年でありたい。  
                                         (蓮井 邦宗記)

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