山門の言葉

令和8年7月山門の言葉

煩悩の所為なり

『歎異抄』

ホルムズ海峡封鎖による、石油供給の著しい減少。それに伴う、品物不足による物価上昇。私たちの生活に不安の波が押し寄せている。

そもそも石油とは、太古の生物の死骸が地中で長い時間をかけて変化した物である。十年、百年の話ではない。数百万、数千万年という途方もない時間をかけて自然に生成された物であると、子どもの頃に見た図鑑を思い出す。

その自然現象でたまたまで出来た物を、私たち人間は、我が物顔で自分の所有物とし、それを奪い合い争うことを続けてきた。自然からいただいている恩恵であるはずなのに、そのことを忘れて、あることを当然とし、不足していることを異常としている。確保することに終始して、そこに悲しみや痛みという感情は微塵もない。

これが、私たち人間が生まれながらにして、具えている業の中身である。親鸞聖人はそういう痛みや悲しみを感じない、違和感を抱かないことは、煩悩の所為であると教えられる。煩悩のせいだから仕方ないということではない。

煩悩とは、どんな人にもある欲であり、生きている限り消えることはない。要は煩悩とは私そのものであり、煩悩の所為とは、言い換えれば私たちのせいである。

自然が何千万年という年月をかけて、数えきれない命を犠牲にして偶然できた恵み。それを人間のもっと欲しいという、欲を満たすためだけの道具としてしか考えない。

自分の満足だけを追い求める。どこまでも業の深い私の姿を、昨今の世界情勢が、炙り出してくる。 (蓮井 邦宗記)

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